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唯の飼い猫シーナは夜になるとどこかに出かけて行きます。どこに行くのかを知りたい唯は後をこっそり追いかけて行きました。シーナが路地へ急に入った時、唯はシーナを見失ってしまいました。周りには古いお店が沢山並んでいます。そこは、お父さんからつくもがみがでるぞーと脅かされてた思い出横丁でした。唯がびくびくしていると、「僕たち、豚足ブラザースっていうつくもがみなんだ。宜しくね。」
唯がお店を覗くと、天井からぶら下がっていたわらの塊のようなつくもがみが話しかけてきました。「おれは弁慶。この辺の店はね、戦後食べるものがないころから続いているんだ。当時は肉が少なかったから、代わりに豚足を食べに多くの人がこの店に来ていたんだよ。でも、今では豚足にはコラーゲンがあるので女性に人気なんだ。よし、みんな、コラーゲン豚足ラインダンスを見せてやってくれ」というと、四十八脚の豚足がカウンターに並び、一斉にラインダンスを踊り出しました。ダンスが終わると、「そうそう、君の猫ちゃんは『コーラスが始るよ』と言うと、店の二階の窓から出て行ったよ」と言いました。
店を出て、歩いて行くとうなぎ屋さんがありました。唯は猫がいないかなと思って覗いてみました。すすで真っ黒になった電灯がぶら下がっています。いえいえ、良く見ると、光る電球を胸に付けた大きなうなぎでした。「俺はうなぎ電球と言うつくもがみだ。猫ちゃんが来たってここには食べるものは無いね。この店では捨てるものがでないんだよ。頭だって、えらだって、串焼きにしちゃうからね。仲間たちにも『どうせ食われるなら大切に全部食ってもらえよ』っていつも言っているんだ。」知らぬ間に集まっていたうなぎたちが一斉に体をくねらせてうなづきました。おや、うなぎの中に猫のしっぽが紛れ込んでいます。
アッシーカエル-朝起 猫のシーナを追って外に出ると、第九の喜びの歌が聞こえて来る店があります。覗いてみると…。「酒と愛と真の友。虫もカエルも喜び天使は空に」とザリガニが歌い、「この地球を家とするものは共感を守り育てよ。」とスッポンの甲羅たちも声を張り上げ、「心は楽しくしあわせあふれ、響くはわれらのよろこびの歌」と足だけのカエルも大声を出していました。唯はこの横丁では豚足やうなぎやカエルたちが食べられてしまうのにその事を喜んでいるかのような振る舞いが不思議でしたが、このコーラスを聴きながら、命を大切にすると言う意味が少し分ったような気がしました。曲が終わって指揮者がこちらを向くとなんと猫のシーナでした。
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